カリグラフィーの歴史


当教室であつかっている西洋書体を簡単な歴史とともにご案内いたします。
教室で勉強しています生活を彩るカリグラフィーの作品やテキストとあわせてご覧ください。

 


お教室ではほとんどが実技になります。

時折生徒さんからカリグラフィーの歴史についてのご質問を受けますが、詳しく述べる時間が無く、簡単にまとめておいた方が良いと思い、このページを書きました。

 

まとめるにあたり、下記参考文献に掲載された文字の図版を使えばわかりやすいのですが、著作権上それはできません。

 

カリグラフィー作品やお教室で使用している「生活を彩るカリグラフィー」のオリジナルテキストの画像とともにご案内いたします。むしろ、カリグラフィーを身近に感じていただけるのではないかと思います。

 

カリグラフィーの歴史にご興味がおありの方は、わかりやすく書かれているお勧めの図書を下に記載いたしました。

ご参考にしてくださいませ。

 

 

 

カリグラフィー5000年の歴史


メソポタミアで楔形文字が、エジプトでヒエログリフが使われはじめたのが約5,000年前になります。




古代ギリシャ・ローマとキリスト教


 

当教室でレッスンしている一番古い書体が2,000年前の古代ローマ碑文文字、ローマンキャピタル体です。

 

西洋の国々は古代ギリシャ・ローマ時代の文化とキリスト教文化を基盤に発展してきました。

 カリグラフィーの勉強をしながら2,000年の西洋書体の歴史を少しだけ知ると、両者は共存しながらも時代の転換期にはどちらかの文化をクローズアップさせて来たことがわかります。

 

 

 

最初の写本文字アンシャル体


 

4世紀にキリスト教が公認され、東ローマ帝国では公用語だったギリシャ文字によるグリークアンシャル体が、ラテン地方ではラテンアンシャル体が写本文字として作られました。

 

当教室ではラテンアンシャル体の勉強をいたします。

※掲載画像の作品は冒頭の文字に金箔をほどこしたラテンアンシャル体で書いてあります。現存する写本で金箔を施した彩色が多く見られるようになるのはカロリン朝の写本からです。

 

 

 

後期のアンシャル体


 

6世紀くらいには左のように執筆の仕方に技巧的な要素が加わったアンシャル体がみられるようになります。

アーティフィシャルアンシャル体レイトアンシャル体とも呼ばれています。

 

 

 

カロリン朝の文字


 

※製作Yoshida

 

9~10世紀のカロリン朝の文字もとても重要です。カール大帝が興したフランク王国で使われた文字でカロリン体と呼ばれています。


写本を飾る大文字はカロリンキャピタル体と呼ばれ、古代ローマ碑文文字ローマンキャピタル体をもとに作られました。

 

上の画像はローマンキャピタル体をもとに、カロリン朝の写本にみられる文字組みをし、金箔を施して作られた作品です。”N”,”Ⅰ”,”UR”に注目してみてください。

 

 

 

 

本文にはローマンハーフアンシャル体をもとに作られたカロリンミナスキュール体(カロリン小文字体)が使われました。

 

 

 

中世ゴシック様式の文字


 

時はロマネスクからゴシックへと移り変わり、文字も建築のように先が尖ったアーチ状の四角い書体と変わって行きます。
ゴシック体(ブラックレター体)と呼ばれる文字が書かれるようになります。

 

最もカリグラフィーが華やかだった時代です。

当時は写字生(カリグラファー)と彩色画家(イルミネーター)、装丁家の分業で所本が作られたのです。

中世末期になりますと、裕福な商人が台頭し写本を持つ人々が増えてきました。

 

 

 

ルネッサンス期の文字


 

中世が終わり、古代ギリシャ、ローマをお手本に文芸復興を遂げます。

 やはり文字もまた、古代ローマ文字をお手本に変化するのです。

 

カロリン小文字体をもとにヒューマニスト体が作られ、大文字体は古代ローマ碑文文字ローマンキャピタル体をもとに作られました。

 

 

 

商業の発達とカリグラフィー1


 

文芸復興を成し遂げたイタリアでは、商業がますます発達していきます。商業用の公文書などに用いられる手書き文字イタリック体が書かれるようになりました。

 

イタリック体の大文字は古代ローマ碑文文字ローマンキャピタル体を元に、手書き文字用に傾斜させて書かれているのが特徴です。

 

現在でも読みやすく、美しい書体ですし、小さな文字から大きな文字まで自由に書くことができるため良く用います。

 

      

 

商業の発達とカリグラフィー2


 

17世紀末にはイギリスで興った産業革命と共に発達した書体で、カッパープレート体(イングリッシュラウンドハンド)が書かれるようになります。細い線が美しくでる、銅板印刷に適した文字で、その名前の由来は銅板かきているのです。

 この書体は先が尖ったペンで太い線と細い線を出して書きます。

 

イングリッシュラウンドハンドはアメリカへ渡り様々な形に展開していきます。

日本で最近まで英語の授業で学んだ筆記体の大元の書体はカッパープレート体です。

 

 

 

再び中世に~エドワード・ジョンストンの仕事


 

19世紀中期にアーツ&クラフツ運動を提唱したウィリアム・モリスは有名です。

産業革命によってできた粗悪な工業製品に反発し、中世のギルドによる手仕事に目を向けたのです。

 

モリスの影響を受けたエドワード・ジョンストンが膨大な写本を研究し、カリグラフィーを復活させたのが20世紀初頭です。

 

エドワード・ジョンストンは近代カリグラフィーの祖と呼ばれています。

私たちがこうしてカリグラフィーに親しむことができるのはジョンストンの研究のおかげなのですね。

 

左の画像は、中世のゴシック体の要素を持ち合わせたイタリック体で、ゴシサイズドイタリック体ジョンストンズイタリック体と呼ばれています。

 

 

 

 

カリグラフィー参考図書



※「カリグラフィー本格入門独習ブック」小田原真喜子著(歴史についてのページ:小野悦子著)/日本ヴォーグ社
※「文字の考古学Ⅰ」菊池徹夫編/同成社
※「文字の世界史」ルイ・ジャン・カルベ著/河出書房新社
※「カリグラフィー年表」須子桂子著/一寸社
※「知のヴィジュアル百科13 文字と書の歴史」カレン・ブルックフィールド著、浅葉克己日本語監修/あすなろ書房
※「Vignette01-トラヤヌス帝の碑文がかたる」木村雅彦著/朗文堂
※「書字法・装飾法・文字造形」エドワード・ジョンストン著、遠山由美訳/朗文堂
※「西洋書体の歴史」スタン・ナイト著、高宮利行訳/慶応義塾大学出版会
※「もっと知りたいカリグラフィー」デビット・ハリス著、小田原真喜子監修、弓狩直子訳/雄鶏社
※「書体の源泉」マイケル・ガリック著、高橋誠訳/千モウ社
※「世界美術大全集6、7、10」/小学館
※「ケルズの書」バーナード・ミーハン著、鶴岡真弓訳/創元社

 

 

お勧めの文献

※「西洋書体の歴史」スタン・ナイト著、高宮利行訳/慶応義塾大学出版会
※「書体の源泉」マイケル・ガリック著、高橋誠訳/千モウ社

 

 

 

川村 浩子

 

 


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